弐章/英雄/挿話参拾弐/時を隔てた再会

氷の大陸、元、浄の国のほぼ中心にある露衣土城。

とうとう燿炎達、討伐軍の別働隊が此処まで、やって来たのだ。

崙土達を倒すと、後は燿炎達を阻む者は居なかった。

恐らくは、もう露衣土城に強力な将は残っていないのであろう。

露衣土軍の本隊は湘の国で展開して、討伐軍の本隊と睨み合いを続けている。

そして先日、司令官の崙土も倒したのだ。

燿炎達、討伐軍はそのまま露衣土城の中へ突撃して行く。

露衣土城の中へは、すんなりと入る事が出来た。

しかし城の中に入った途端、残っている城兵の襲撃を受ける。

城の中のあちらこちらで魔法に依る戦闘が繰り広げられていく。

それら城兵は他の者達に任せて、燿炎は一人で露衣土の下へと向かった。

燿炎にとっては、かつて知ったる露衣土城である。

懐かしくも感じたが、今は感慨に耽っている訳にもいかない。

それよりも、やけに簡単に進む事が出来る。

露衣土の下へ向かう燿炎を阻む者が居ないのだ。

燿炎は感じ取った。

〈これは罠だと〉

〈一騎討ちをする為だと〉

例え罠だとしても燿炎は戦うしかない。

燿炎達にとっても露衣土との一騎討ちを狙っていたのである。

此処へ来て、露衣土と燿炎達の思惑が一致したのだ。

露衣土にとっても予定通りであって、燿炎にとっても予定通りなのである。

もう少しで城の屋上へと辿り着く。

屋上の広場の先に露衣土の部屋がある。

そこで炮炎が殺されたのだ。

それも燿炎の目前で殺された。

燿炎は屋上へと出る。

燿炎が露衣土の部屋の方へ体を向けると、露衣土が自室の前で待ち構えていた。

燿炎の中で一気に緊張感が高まっていく。

燿炎はゆっくりと露衣土の表情がはっきりと判る位置まで近づき、足を止めて露衣土と向き合った。

本当に久しぶりの対面である。

かつて燿炎はこの露衣土と共に精霊の星を統一するべく戦っていたのだ。

それより以前は炮炎も含めて、幼少時代を共に過ごしてきた幼馴染みでもある。

時には一緒に悪さをして、一緒に叱られもした。

そんな悪童も成長するにつれて、目の前で繰り返される理不尽さや不条理さに疑問を膨らませていく。

そんな中で三人は世の中を良くしようと誓い合ったりもした。

自分達がやらなければ何も変わらない。

世の中を良くする為には自分達が率先して行動する必要があると考えたのである。

そして、そこまでは三人で問題を共有も出来ていた。

しかし、そこから先で違いが出てきてしまう。

問題を解決する手段において、炮炎が一人、意見を違える事になる。

多少、強引にでも改善をしていく必要があるとする、露衣土と燿炎。

そんな二人に対して、軽挙妄動は慎むべきだと炮炎は譲らない。

その後、炮炎は一人で二人の下を去って行く事となった。

一方、露衣土と燿炎は力ずくに依る改善を進めていく事となる。

いつしか、それは統一戦争となって、精霊の星、全体へと拡がっていった。

その後、統一戦争の終結に拠って、露衣土がこの精霊の星を一つの国家の下、纏め上げる事となる。

しかし、その事が結果的に炮炎を敵対させてしまう事にもなった。

そして燿炎にとって実の兄でもあった炮炎は、この先にある露衣土の部屋で露衣土に殺されたのだ。

その事を切っ掛けに燿炎は露衣土と自身に対する疑問を深める事になる。

その後、燿炎は露衣土の下を離れて、反乱軍に身を投ずる事となった。

そして燿炎は反乱軍のリーダーになる。

それから二人は直接対面する事はなかった。

そして十数年の時を隔てて二人は今、再び対面している。

今度はお互いがお互いの敵となって、であった。
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by gushax2 | 2016-06-20 06:13 | 弐章/英雄
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