カテゴリ:壱章/人斬り( 30 )

壱章/人斬り/挿話参拾/宿命の男達

虎士郎は黙ったまま天竜を睨み続けている。

表情に変化はない。

ただただ睨んでいるのである。

「さて、とっとと終わらしちまうか」

独り言の様に天竜が言った。

「抜きな」

続け様に天竜が虎士郎へ声を掛けた。

虎士郎はそう促されて、ゆっくりと刀を抜いて構える。

天竜も虎士郎の動きに合わせる様に、ゆっくりと刀を抜いて構えた。

数瞬の静寂が二人を包み込む。

そして、その静寂が二人を縛り付けようとした、その時、その静寂を振り払うかの様に天竜が言う。

「例の奴で来な」

ー例の奴ー

隠岐流剣術の必殺剣である月影の事である。

虎士郎はすぐさま、それを理解した様だ。

普通なら、そう相手から促されると警戒する事もあってか、中々に自分からは動き辛かったりもするのだが、虎士郎は違った。

天竜の言うままに、すぐさま【月影】を繰り出す。

一気に間合いが詰まって行った。

虎士郎の剣先が天竜の喉元へと伸びて行く。

しかし天竜は避けようともしない。

微動だにせずに虎士郎を睨んでいた。

虎士郎の剣先は、すぐ、そこまで来ている。

それでも天竜はまだ微動だにしない。

ついに虎士郎の剣先が天竜の喉元を貫いた。

その瞬間に天竜が動く。

天竜は物凄い速さで刀を振った。

恐らく普通の人間には捉える事が出来ないであろう速さで。

一瞬にして目の前の虎士郎の胴を真っ二つにしてのけた。

虎士郎の下半身は地面に転がって、血溜まりを拡げている。

上半身は天竜の喉元を貫いた刀を握ったまま、ぶら下がっている状態だった。

胴の切断面から大量の血が垂れて、その下にも血溜まりを拡げている。

すでに虎士郎は絶命していた。

その表情は天竜に向かって来た時と何の変化も無く、その目は天竜を睨んだまま、いや、見詰めたまま、なのかもしれない。

そして天竜は、と言うと、満足げな表情を浮かべながら虎士郎を睨んで、いや、優しく見詰めている様だった。

そして、そのまま右斜め前方へと倒れ込んだ。

天竜もまた、すでに絶命していた。

二人は虎士郎の刀で繋がれたまま、向き合う状態で横に倒れ込んでいる。

天竜はその気になれば、虎士郎に【月影】を出させずに闘いを進めていく事は出来たであろう。

しかし虎士郎を斬る事が出来なければ、いつまで経っても決着は着かないのだ。

そして、そうする事で虎士郎がバテるのを待つ事も出来たのであろうが、それもまた自分が先にバテる可能性も考えると、その様な不確定要素に自らの命を預ける気にはなれなかったのである。

だから自らの命を盾にしてでも虎士郎を斬る事のみに専念したのだ。

そして見事にそれをやってのけたのである。

虎士郎は虎士郎で天竜の刀を避ける事は出来たであろう。

しかし天竜の刀を避けようとすれば、繰り出した【月影】を引かなければならない。

虎士郎もまた、自分が斬られる事を承知の上で天竜を斬りに行ったのである。

まるでお互いが、こうなる事を望んでいたか、の様な結末であった。

もしかしたら二人は二人共、自分を斬る事の出来る者を求めて、人を斬り続けていたのかもしれない。

そして二人は二人共、その求めるものを同時に手に入れたのではなかろうか。

こうして向き合って、見詰め合ったまま倒れ込んでいる姿を見ると、恋人同士が見詰め合っている様にも見て取れるのである。

長年に渡って追い求めてきた、愛しき運命の恋人に出会った様な。

まさに、そんなものを感じさせる様な二人の姿であった。

そして二人を繋ぎ留めていたのも、現在の姿と同じく『剣』であったのである。

─────

此処に、
こうして、
二人の類い稀なる剣士、
いや、
『人斬り』
が、
闇へと還る事になったのである。

           ☆壱章/人斬り☆
                    完
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by gushax2 | 2016-05-18 05:58 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾玖/待伏せる男と待ち伏せされる男

辺りは闇に包まれていた。

闇と言っても夜空に星は瞬いている。

月は出ていない。

新月であった。

月明かりがないせいか、星がいつも以上に輝いて見える。

冷え込みも大分、厳しくなりつつあった。

いつもなら蟋蟀等、虫の鳴き声も聞こえてくるはずなのだが、今日は何故か静まり返っている。

そんな中、一人の男が歩いて来た。

その男の目には狂気が宿っている様である。

隠岐虎士郎であった。

先程、目前で実の母を亡くして、その影響もあっての事か、今までは虎士郎が眠りに就かないと現れる事のなかった、もう一つの人格、人斬りの人格の状態で夜の京の町を獲物を探すかの如く彷徨っている様だ。

すぐ、そこには大きな桜の木があった。

幹の太さは大人四人で手を繋いで輪になったくらいの太さであろうか。

そして虎士郎はその桜の木の脇を通り過ぎて、三間程、進んだ所で急に振り返って、桜の木の幹の根元辺りを睨み付けた。

そこには目が二つあって、同様にこちらを睨んでいる。

よく見てみると、そこには人が居る様だ。

しかし一見しただけでは桜の木の化け物の様に見えるであろう。

まるで木の幹に目が付いている様に感じる程、桜の木と一体化している様に感じる。

そして、その人の様なものは異様に大きかった。

人ではないものであっても全然に不思議ではないだろう。

寧ろ人であった方が信じられないのかもしれない。

そして、その人の様なものは桜の根と根の間に腰を下ろし、両脚を投げ出して背を幹に預けたまま虎士郎を射抜く様に見据えている。

虎士郎はその人の様なものの視線に動きを封じられてしまっている様だ。

虎士郎から攻撃を仕掛ければ、圧倒的に有利な体勢であるはずなのに、それが出来ないでいるのである。

「ふふふ、」

突然にその人の様なものが小さく笑った。

更にいつの間にか、その人の様なものは立ち上がっていたのである。

虎士郎には、いつ立ち上がったのか判らなかった。

恐らく虎士郎がその人の様なものの笑い声に気を取られた一瞬の内に立ち上がったのであろう。

虎士郎にとっては油断があった。

体勢が有利であった事で油断してしまい、その隙をつかれたのだ。

これで体勢に有利不利は無くなってしまった。

しかし人の様なものが立ち上がった事で代わりに不気味さは減る。

その人の様なものが少なくとも人ではあろう事が判ったからだ。

「今日は待たせて貰ったぜ」

その人の様なものが言った。

虎士郎は黙ったまま、その人の様なものを睨んでいる。

「待ち伏せが得意なのは、お前さんだけじゃないって事よ」

人の様なものが虎士郎に言い放った。

虎士郎はまだ沈黙している。

「どうだ?待ち伏せされる気分は?」

その人の様なものが虎士郎に訊いた。

虎士郎は答えない。

「なんだかなぁ。面白くねぇ奴だなぁ」

人の様なものは不満そうに言った。

虎士郎は黙ったまま、その人の様なものを睨み続けている。

そして、その人の様なものが自らの正体を明かす。

「まぁ、いいや。教えといてやるよ。今夜、お前さんは、この黒谷天竜に斬られる運命にあるんだぜ」

表情に不敵な笑みを貼り付けたまま、天竜が虎士郎に言い放った。
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by gushax2 | 2016-05-17 06:04 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾捌/孤独に呑まれる男

虎士郎は玄関先まで木下先生を見送りに出て、母の部屋に戻って来ていた。

お園はもう泣き止んでいる。

虎士郎は母の寝ている布団の隣で座して、黙り込んでしまう。

お園も虎士郎に話し掛けたりもせず黙って、ただ虎士郎の母を見守っている様だった。

そのまま、どれくらいの時間が過ぎたであろうか。

外はもう、日が暮れ始めていた。

沈黙を破って虎士郎がお園に声を掛ける。

「そろそろ日も暮れるから家にお帰り」

「うん。でも大丈夫?」

お園が虎士郎を気遣った。

自分の想いを率直に伝える、虎士郎。

「ちょっと母と二人きりにして欲しいんだ」

「あ、そうだよね。ごめんね、気が利かなくて」

お園は虎士郎にそう言われて、簡単に謝った。

虎士郎がそんなお園の言葉に対しての気遣いを見せる。

「そんな事ないよ。お園ちゃんには今まで色々と助けて貰ってきたからね」

「ありがとう。それじゃ、今日はそろそろ帰らせて貰うね」

お園は虎士郎の気遣いに感謝を述べて、帰宅する意思を示した。

虎士郎もお園への感謝の言葉を返す。

「こちらこそ、いつもありがとう」

虎士郎はお園を見送りに出た。

「また明日、来るね」

お園は別れ際にそう言って、家へと帰って行った。

虎士郎は再び母の部屋に戻って、母の寝ている布団の隣に座し、母の手を握りながら、じっと母の顔を見詰めている。

虎士郎にとっては母だけが唯一、心を開ける存在であった。

父や虎太郎からは隠岐家の恥晒しと罵られ続けて、虎次郎や虎三郎には、そこまでされる事はなかったが、虎太郎も含めた兄達には強い劣等感を感じずにはいられなかったのである。

そんな虎士郎にとって、母は唯一無二の存在であった。

その母も今まさに天へと召されようとしている。

しかし実は母をここまで追いやった要因の殆どは、虎士郎自身の所為に因るものなのであった。

父の源太郎、そして虎次郎と虎三郎を斬り殺したのは虎士郎なのである。

しかし虎士郎はその事は全く覚えていない。

虎士郎が眠りに就くと出てくる、もう一つの人格がやった事なのである。

本人の自覚が無いとはいえ、なんと哀しい事なのだろうか。

その哀しみには気付くべくもなく、虎士郎は今まさに、孤独という化け物に呑み込まれようとしている。

虎士郎はこれまでも、ずっと孤独は感じていた。

しかし母の存在が寸前で虎士郎を孤独から救っていたのである。

その母も、もうすぐ天へと召される事となるだろう。

虎士郎は寂しかった。

虎士郎は悲しかった。

しかし涙すら出て来ないのである。

勿論、お園に先に泣かれてしまったので自分が泣く機会を逸してしまった事も考えられるが、それでも尚、母の死を目前にしながら、泣く事すら出来ない自分自身がどうしても許す事が出来なかった。

ふと、急に母の寝息が聞こえなくなる。

虎士郎は母の胸に耳を当てた。

何も聞こえない。

突然に虎士郎の中で何かが変わった。

虎士郎は気を失った。

いや、もう一つの人格に意識を奪われた。

とうとう虎士郎は孤独という化け物に呑み込まれてしまったのである。
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by gushax2 | 2016-05-16 06:33 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾漆/命尽きようとしている女

虎士郎は隠岐家の実家に戻って来ていた。

いつもなら道場の方から門下生達の掛け声が喧しいくらいに届いていたが、先日、何者かに此処の道場で道場主の虎太郎が斬られていたので、今はもう、門下生達も通わなくなって静まり返っている。

そんな中、虎士郎は母の部屋に来て母の看病をしていた。

母は息子達に次々と先立たれる事になって、心労が重なり病床に伏せてしまったのである。

二日前に行われた虎太郎の葬儀にも出席が出来ない程に衰弱しきっていた。

そして今はもう、母のその顔には死相が色濃く浮き出ている様である。

虎士郎はそんな母親を付きっきりで看病していた。

すると誰かが廊下を急ぐ様な足音が聞こえてくる。

「虎士郎ちゃ~ん」

声と共にいきなり部屋の廊下側の襖が開かれた。

「木下先生が来てくれたわよ」

言いながら、お園が部屋に飛び込んで来た。

木下先生はこの辺りの住人がよく診てもらっている、お医者様の先生である。

大変評判も良く、皆の信頼も厚かった。

お園は木下先生を呼びに行っていたのである。

「様子はどう?」

お園が虎士郎に声を掛けた。

虎士郎は無言のまま首を横に振る。

「そっかぁ、でも、大丈夫だわよ。木下先生がいらっしゃってくれたから」

虎士郎を慰める様にお園が言った。

幾らもしない内に木下先生もこの部屋にやって来る。

「わざわざお越し頂いて、ありがとうございます」

虎士郎が出迎えた。

木下先生は部屋に入って来るなり、虎士郎の母の脇に座って、虎士郎の母の手を取りながら虎士郎に訊く。

「その後、どんな感じですか?」

「あれ以来、ずっと目を覚ましません」

虎士郎は俯きながら答えた。

詳しい状況を確認する、木下先生。

「と云う事は食事も全然、摂れていないのかな!?」

「はい」

虎士郎は短く応えた。

「う~む、」

木下先生は暫くの間、考え込んでしまう。

虎士郎もお園も何も言えないでいた。

その沈黙を破って木下先生が話し始める。

「大変に申し上げ難いのですが、」

「はい」

虎士郎は短く応えた。

沈痛な面持ちで木下先生が虎士郎に話し続ける。

「隠岐様のお母様はもう、手の施しようがない、」

「そうですか」

観念する様に虎士郎は一言だけ応えた。

木下先生は自らにも言い聞かせる様に言う。

「少なくとも私には、もう、どうする事も出来ません」

突然にお園が泣き出した。

再び沈黙がこの部屋を包み込み、お園の泣き声だけが響いている。

「木下先生。わざわざお越し頂いて、本当にありがとうございました」

今度は虎士郎が沈黙を破って、木下先生に礼を述べながら深々と頭を下げた。

木下先生は自らの無力さを詫びる様に言う。

「いや、こちらこそ何も出来ずに済まないね」

「そんな事はありません。木下先生は立派なお医者様です」

虎士郎は木下先生の言葉を否定して、尊敬の念を示した。

そんな虎士郎への感謝と現実の厳しさを伝える、木下先生。

「ありがとう。それはともかく、お母様はもう、いつ死んでも、おかしくありません」

虎士郎は言葉に詰まる。

木下先生が話を続ける。

「虎士郎さんは出来るだけ付き添って居てあげてください」

「はい」

虎士郎が短く応えた。

「それじゃ、私はこれで失礼をさせて貰うよ」

この言葉を最後に木下先生は隠岐家の実家を後にする。
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by gushax2 | 2016-05-15 05:34 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾陸/甘い男と不安を拭えなかった男

静寂に包まれた闇の中で二人の男が対峙していた。

一人は一際大柄な男で額から左頬にかけての大きな刀傷が目立っている。

黒谷天竜であった。

もう一人は取立てて言う程の事もない様な男である。

強いて挙げるなら、端正な顔立ちではあった。

隠岐虎太郎である。

この道場の主でもあった。

暗闇の中で二人は静寂に包まれている。

そして先にその静寂を切り裂いたのは虎太郎だった。

「先手必勝!」

叫びながら天竜へと斬り掛かって行った。

天竜は難無く自分の刀で虎太郎の刀を受ける。

虎太郎は次々と刀を振ってきた。

天竜は防戦一方である。

「どうした!?天竜?」

虎太郎が天竜に声を掛けた。

天竜が虎太郎の刀を受けながら応える。

「どうもしねぇよ。楽しいねぇ」

その表情には薄らと笑みが浮かんでいる様にも見えた。

「そうか。では、これでも楽しんでいられるかな」

そう言いながら虎太郎が刀をいっそう激しく振ってくる。

天竜は余裕を持って、虎太郎の刀を受けている様に見えた。

ところがその時、一瞬、天竜が体勢を崩す。

天竜はすぐさま体勢を立て直したが、その隙を虎太郎は見逃さなかった。

「隙あり!」

掛け声と共に虎太郎の刀が天竜の喉元へと伸びて来ていた。

天竜は必死に左後方へと体を逃したが、虎太郎の刀は信じられない速さで天竜を追って来る。

今度は右後方へと体を逃した。

しかし幾らもしない内に壁にぶち当たってしまう。

虎太郎の刀は、すぐ、そこまで迫って来ていた。

「むぅ」

天竜が呻いた。

途端、再び闇は静寂に包まれる。

虎太郎の刀は天竜の喉の皮を一枚程、切り裂いて止まっていた。

二人はその体勢のまま微動だにしない。

数瞬の静寂を破って、虎太郎が天竜に声を掛ける。

「どうやら、私の勝ちの様だな」

「甘いな」

天竜は呟く様に言いながら刀を振って、いきなり目の前の虎太郎の胴体を真っ二つにする。

虎太郎の下半身は意思を失い倒れ込み、上半身は床に投げ出された。

床には血溜まりが拡がっていく。

「卑怯者、」

虎太郎は最後にそう言い残して、口から血の泡を吹きながら絶命した。

天竜は外に出て、徐に自らの腕を切る。

切ると言っても切り落とした訳ではない。

天竜はいつも人を斬った後に、こうして自傷をするのであった。

そして体中にある自傷による傷はすでに百五十を超えている。

いつもなら自傷をする事で人を斬った事に因る興奮の様なものが抑えられていたのだが、今日は何かがおかしかった。

何故だか腹立たしい自分が居るのである。

理由は天竜なりには理解が出来ていた。

隠岐流の必殺剣を見切る事が出来なかったから。

天竜はそう理解するしかなかったのである。

虎太郎との闘いは決して本気ではなかった。

いや、本気ではあったが隠岐流の必殺剣を出させる為に、わざと受けに回ったのである。

しかしそれでも尚、隠岐流の必殺剣は見切る事が出来なかった。

天竜は虎士郎に対して負ける気はしていなかったが、斬れる自信も無かったのである。

「くそっ!」

天竜は一人、闇の中で、内なる闇に向かって吠えた。
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by gushax2 | 2016-05-14 03:12 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾伍/闇の中の男達

蟋蟀の鳴き声が闇に溶け込んでいく。

隠岐剣術道場のちょうど真ん中辺りに一人の男が座していた。

隠岐虎太郎である。

明かりは一切、点けていない。

闇の中で己の闇を見詰めているかの様だ。

隠岐流剣術は元々、暗殺剣である。

こうして外の闇と内の闇と闘うのも大切な鍛練の一つなのであった。

しかし、この鍛練は隠岐流直系の者だけが行っている。

外から隠岐流を学びに来る門下生が帰った後、直系の者だけが行っているのだ。

以前は虎太郎の後に虎次郎、虎三郎も順にこの鍛練を行っていた。

しかし今はもう、その二人は居ない。

虎太郎だけが、こうして毎日、闇の中に身を置いているのであった。

「いつから居た?」

突然、虎太郎が闇に問うた。

闇が惚ける。

「さぁな、」

「こんな時間に何用だ?」

虎太郎が再び闇に問うた。

闇は虎太郎の問いには構わずに虎三郎の死を惜しむ。

「虎三郎は惜しい事をしたな」

「ああ、」

表情一つ変えずに虎太郎が短く応えた。

闇が勿体振る様な言い方をする。

「俺は虎次郎と虎三郎を斬った奴を知ってるぜ」

「ほほう、」

虎太郎は闇の言葉に関心を示しはしたが、まだ表情にも姿勢にも変化はなかった。

闇が虎太郎に訊く。

「知りたいか?」

「教えてくれるのか?」

闇に訊き返す、虎太郎。

闇が応える。

「俺に勝ったら、教えてやるぜ」

「なるほど。お前らしいな、天竜」

そう言いながら虎太郎は立ち上がって、背後の闇へと向き直る。

そして虎太郎が向き直った先の壁に天竜は腕を組んだ状態で背を預け、虎太郎に向かって微笑んでいる様にも見て取れた。

「明かりを点けようか?」

虎太郎が天竜に問うた。

天竜はぶっきら棒に言い返す。

「いや、このままで構わねぇよ。俺も闇には慣れてるぜ」

「ほほう」

虎太郎が少し感心をした。

自らの出自を明らかにする、天竜。

「うちは元々忍者の家系だったんでね」

「なるほど。私に気付かれずに道場に入って来れたのも忍術の為せる技って事かな」

天竜の言葉に納得した、虎太郎。

天竜は珍しく謙遜する。

「忍術って言う程のもんでもねぇけどな」

「しかし忍者って割には目立ち過ぎるんじゃねぇのかい!?」

虎太郎が天竜を揶揄う様に言った。

揶揄われて言い返す、天竜。

「うるせぇ!でかくなっちまったもんは仕方がねぇだろ」

「よくも、そんなにも育ったもんだよ」

虎太郎は皮肉を言った。

天竜は話を変えようとする。

「それよりもよぅ、」

「なんだ?」

虎太郎が訊き返した。

今度は天竜が虎太郎に対しての皮肉を言う。

「早く気付いてくれて助かったぜ。お前が朝まで気付かなかったら、どうしようかと思ったよ」

「そうすれば良かったかな」

虎太郎がそう返した途端、二人は合わせる様に声を出して笑い出す。

「はははははは、」

「ふふふふふふ、」

数瞬の間、笑い合った後、虎太郎が天竜を促す。

「さて、そろそろ始めようか」

「いいぜ」

天竜はそう応えながら背を壁から剥がして、数歩、虎太郎の方へと近付いた。

剣の間合いには、まだ数歩程、距離を詰めなければならない。

その距離で二人はどちらからともなく互いに刀を抜いて構えた。

二人は闇に飲み込まれて、闇が静寂に包まれる。
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by gushax2 | 2016-05-13 06:17 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾肆/不安に駆られる男

闇が静寂に包まれる中、虎士郎の刀が虎三郎の喉を貫いていた。

隠岐流剣術の必殺剣である【月影】に依り、勝負がついたのである。

─────

【月影】とは。

隠岐流剣術に古くから伝わる必殺剣である。

隠岐流剣術は元々、暗殺剣であった。

しかし源太郎の曾祖父が立身出世の為に京都に出て来て道場を開くと、剣技の一部は門下生の為に使い易くしていく事になる。

それでも幾つかの奥義は今も直系の者達に限って伝えられていた。

【月影】はそんな奥義の一つである。

特徴は【突き】を基本とした剣技であった。

一般的な剣術における【突き】とは直線的に相手を突き刺すものである。

しかし隠岐流剣術の必殺剣である【月影】は相手の動きに合わせて曲線的に相手を追い掛けて、相手を突き刺すものであった。

だから【月影】を使いこなせる者が放った【月影】は先ず、百発百中と言っていい程、確実に相手の急所である喉を外す事はない。

しかし【月影】は繰り出す機会を作る事が大変に難しく、また、人並み外れた観察力も必要としていたので、誰にでも使いこなせる訳ではなかった。

この物語の登場人物でも、隠岐四兄弟の父であった源太郎、そして後継ぎの虎太郎、更に虎太郎以上の可能性を秘めた虎三郎の三人が修得をしていた様である。

虎次郎も使えない事はなかったが、百発百中という程のところまでは使いこなせていなかった。

そして虎士郎は周囲に知られる事無く、密かに【月影】を修得していたのだ。

虎士郎はその【月影】を用いる事で基本的な剣の腕で勝った相手を斬る事も出来た。

─────

この対決も実は虎士郎よりも先に虎三郎が、その【月影】を繰り出していた。

しかし虎士郎はなんと、その【月影】を躱したのである。

そして、その躱されるはずのない【月影】を躱した時点で勝負は決まったのだ。

元々、剣術そのものの腕では虎三郎の方が上であった。

だから先に【月影】を繰り出す機会を作ったのは虎三郎だったのだが、虎士郎は神業とも思える体裁きで虎三郎の放った【月影】を躱し、その隙をついて【月影】を繰り出したのである。

こうして、この哀しむべき双子の勝負は幕を閉じたのであった。

虎士郎は表情一つ変える事なく、虎三郎の喉から刀を引き抜くと、刀を空で一振りして、刀に付いた血を振り払い、ゆっくりと刀を鞘に収める。

虎三郎の体は倒れ込み、地面に血溜まりを拡げていった。

虎士郎は何事もなかったかの様にそのまま闇の中へと消えて行く。

そして暫くの間をおいてから、その場に大きな男が現れた。

額から左頬にかけての大きな刀傷が目立っている。

黒谷天竜であった。

天竜は虎三郎と虎士郎の勝負を観察するべく、虎三郎の後を付けていたのである。

そして闇の中に身を潜めて、二人の勝負を観察していたのだ。

天竜は虎士郎との対決をする前に虎士郎の実力を測っておきたかった。

しかし実際に観察をした事で虎士郎の底知れぬ実力に不安を強めてしまう。

「やはり虎三郎には無理だったか。いや、俺でも奴は斬れるのだろうか」

天竜は闇に向かって一人呟いた。
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by gushax2 | 2016-05-12 06:15 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾参/決意する男と決意を必要としない男

昼間はまだ暑さも残っているが、日が落ちると大分、涼しくなってきた。

夜空には三日月が浮かんでいる。

まるで夜空という大海を行く舟の様であった。

そして今日も虎三郎は、兄、虎次郎の敵でもあり、虎三郎が隊長を任された三番隊の前隊長であった斉藤の敵でもあると思われる、人斬りを探す為に夜回りをしている。

これまでに何度かは不審な人物に遭遇する事もあったのだが、これまでは全て空振りであった。

そして今日もまた、お目当てには有り付けそうもない、そんな風に虎三郎は思い始めている。

その矢先、虎三郎の目線の先に何者かの人影が薄ら見えてきた。

虎三郎が左手で持った提灯の灯りと月明かりが、その人影を怪しく照らしている。

虎三郎はその人影を目で捉えた瞬間から、好きな女子に会いに行く様な胸の鼓動に襲われていた。

更に一瞬、体が金縛りで動けなくなる様な緊張に陥って、その緊張を解す様に何度か呼吸を整える。

そして、その人影の方へゆっくりと歩を進めて行った。

顔を確認が出来る様な距離に入ると、虎三郎の緊張が一気に緩む。

「なんだ、虎士郎じゃないか。こんな時間に何をしているんだ?」

虎三郎から虎士郎に声を掛けた。

しかし虎士郎からの返事はない。

「どうしたんだ?」

虎三郎はそう声を掛けると同時に虎士郎のその異様な雰囲気に気付いて、背筋に虫が這い上がってくる様な感覚に襲われた。

「ま、まさか、」

虎三郎の口から漏れる、悪い憶測。

虎士郎は無言で虎三郎を見据えている。

途端に再び虎三郎の中に緊張の糸が張り詰めた。

そして虎三郎が虎士郎に尋ねる。

「お、お前が、虎次郎兄さんや斉藤さんを斬ったのか!?」

虎士郎は何も言わずに、まだ、虎三郎を見据えている。

虎三郎は虎士郎の沈黙と異様な雰囲気を自らの問いに対する肯定と受け取った。

そして戸惑う、虎三郎。

まさか兄と同志の敵が双子の弟の虎士郎だったなんて。

しかし例え身内であったとしても見逃す訳にもいかないし、自分も虎士郎を殺すつもりで掛からなければ、自分が斬られる事にもなるであろう。

虎士郎の沈黙が虎三郎にとっては殺気にも感じられたのである。

「そうか、虎士郎よ」

虎三郎はそう言って意を決した様に、ゆっくりと刀を抜いて構える。

虎士郎も虎三郎の動きに合わせ、ゆっくりと刀を抜いて構えた。

静寂が闇を包む。

虎三郎が虎士郎に目で問う。

〈お前が虎次郎兄さんを斬ったのか?〉

〈お前が斉藤さんを斬ったのか?〉

虎士郎が沈黙で応える。

〈お前は双子の兄をも斬ろうというのか?〉

〈お前に僕が斬れるのか?〉

再び虎士郎が沈黙で応える。

今度は虎三郎が自らに問う。

〔お前に双子の弟が斬れるのか?〕

〔斬る!〕

〔斬らなければならない!〕

静寂を破って、虎三郎がゆっくりと間合いを詰める。

虎士郎は虎三郎を見据えたまま微動だにしない。

後一歩、いや後半歩で剣の間合いに入る。

そこで虎三郎は歩を止めた。

再び静寂が闇を包む。

しかし今度の静寂は今にも破裂しそうなものである。

そんな闇の中で、虎三郎と虎士郎と云う双子の兄弟が対峙していた。
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by gushax2 | 2016-05-11 05:53 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾弐/誉める女

夏の暑さが残る日差しの中、虎士郎はお園と二人で京の町中を歩いていた。

あちらこちらから蝉の鳴き声が届いてくる。

町人達も蝉に負けないくらいの活気に満ちていた。

そんな中で、お園が虎士郎に虎三郎の話題を振る。

「虎三郎ちゃんが三番隊の隊長さんに、なったんだってねぇ」

数日前に虎三郎が新撰組の三番隊の隊長に任じられていた。

「隊長だった斉藤さんが何者かに斬られちゃったから」

虎士郎は何とも言えない様な表情で応えた。

詳しい事情を知らなかった、お園は言葉を失う。

─────

実は虎士郎が斉藤を斬ったのだが、別人格の虎士郎がやった事なので、主人格の虎士郎にその自覚は無い。

また斉藤は虎三郎を通じて隠岐家と親交があったので、虎士郎とも顔見知りではあったが、別人格の虎士郎には、その事も一切の関係が無い様であった。

ひょっとしたら実の父の源太郎を斬った時や兄の虎次郎を斬ったも、相手が肉親であるとの認識はしてなかったのかもしれない。

別人格の虎士郎はただ目の前の相手を斬る。

それ以外の余計な感情の様なものが抜け落ちてしまっているのかもしれなかった。

その様な事も含めて別人格のした事を主人格の虎士郎は何も覚えていない。

─────

そのまま黙って歩き続ける、お園と虎士郎。

暫くしてから、虎士郎が寂しそうに言う。

「それにしても、虎三郎はすごいや。僕とは大違いだ」

「そんな事を言わないで、」

お園が虎士郎の言葉を嫌がった。

言われて言葉に詰まる、虎士郎。

暫くしてから、今度はお園の方から虎士郎の長所を挙げる。

「虎士郎ちゃんの優しいところが、虎士郎ちゃんの良いところじゃない」

「慰めは要らないよ。優しくたって何も出来やしないんだ」

虎士郎はそう言うと、俯いて立ち止まってしまった。

お園は数歩進んでから、虎士郎が立ち止まった事に気付き、虎士郎の方に振り返って少し怒った様に言う。

「虎士郎ちゃんの馬鹿!私は慰めてなんか、いないわよ!」

虎士郎は何も言えず、俯いたまま微動だにしなかった。

周囲の通行人が足を止めて、遠巻きに二人に対する好奇の目を向ける。

しかし幾らもしない内に周囲は普段通りに動き出す。

そして俯いている虎士郎の様子を見て、お園が率直な疑問を虎士郎にぶつける。

「人を斬る事がそんなに偉い事なの?」

虎士郎はまだ何も言えないでいた。

次々と疑問をぶつける、お園。

「だったら、虎次郎様を斬った人は、斉藤さんを斬った人は、そんなに偉い事をしたって言うの?」

「そういう訳じゃないけど、でも、」

虎士郎はそこまで言って言葉に詰まった。

そんな虎士郎の様子を見て話を続ける、お園。

「でも、何!?人なんて斬れなくたって、いいじゃない」

虎士郎はまた何も言えない。

すれ違う通行人が少しだけ二人に関心を寄せるが、すぐに通り過ぎて行く。

少しの間をおいて、お園は虎士郎に自分が思っている事を素直に伝える。

「子供達と遊んでいる虎士郎ちゃんが、私は素敵だと思うよ」

「ありがとう」

虎士郎は俯いたまま一言だけ応えた。
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by gushax2 | 2016-05-10 06:07 | 壱章/人斬り | Comments(0)

壱章/人斬り/挿話弐拾壱/見る目のある男

「お前等も、いずれは俺に斬られるんだからな」

新撰組の前身である浪士組結成時に、天竜が同志達に向かって言った言葉である。

屈強な者達が集まった浪士組の中でも、天竜は桁外れに強かった。

他の者達は天竜を恐れもしたが、仲間である事で安堵感もあった様である。

もし敵になる事があったとしても、大勢で立ち向かえば何とかなると思ってもいた。

だから天竜は浪士組、そして新撰組の中で重宝される。

悪く言えば、いいように使われていた。

しかし天竜はその様な事も承知の上で、浪士組、そして新撰組に身を置いていたのだ。

そんな天竜が何故、浪士組に参加したのか。

─────

浪士組に参加する前に一人の男との出会いがあった。

江戸に向かう道中の事である。

天竜に対して、日本の将来を憂いて熱く語ってきていた。

「私と一緒に来ないか!?」

天竜は男に誘われた。

男の誘いに対して天竜が立ち合いを求める。

「俺とやり合ってくれるのかい!?」

「為すべき事をやり遂げた後なら、幾らでも相手してやるよ」

男は他に優先すべきものがあるという理由で、立ち合いは受ける事を前提に先延ばしにしようとした。

天竜が男の言う優先すべきものを尋ねる。

「その為すべき事とは?」

「倒幕」

男はあっさりと極秘にしなければならない様な言葉を言った。

天竜はその様な危険な言葉を聞いて、楽しそうに若気ながら応える。

「やはり」

「どうだ?」

男は天竜の考えに変化が無いかを伺った。

天竜が男の危険な誘いに興味を示す。

「面白いな」

「なら、一緒に来い」

再び男は天竜を誘った。

しかし天竜は男の危険な誘いより、男の存在そのものに、より強い興味を示す。

「でも、お前とは敵になった方が、より面白そうだ」

「なんだと!?」

男は天竜の言う事がすぐには理解が出来ずに疑問を漏らした。

自分の言葉の真意を話す、天竜。

「確かに、お前の話を聞くと幕府側の方が分が悪そうだ」

「だったら何故?」

まだ男は納得が出来ずにいる。

男から漏れる疑問に少しずつ応えていく、天竜。

「何故も何も、だから、だよ」

「だから?」

男は詳しく天竜に訊く。

率直に応えていく、天竜。

「勝てそうな方に付いて勝っても面白くない。分の悪い方に付いて、俺の力で勝たせる事に男冥利がある」

「幾らお前が強くても、お前一人でそんな事が出来ると本気で思っているのか!?」

男は天竜の真意に対する否定的な疑問をぶつけた。

天竜は天竜で全てを承知の上である事を告げる。

「さぁな。本気かどうかはともかく、そっちの方が面白そうだって事だよ」

「そうか。残念だ」

男はやっと納得した様だった。

今度は天竜が男に訊く。

「それで、どうする気だ?」

「何がだ?」

男が天竜に訊き返した。

天竜は男に秘密を知った自分の処遇を確認する。

「俺をこのまま放っておくのか!?」

「ああ、放っておくしかないだろ。今、お前とやり合っても私に勝ち目は無い」

男も率直に応えた。

天竜は楽しそうに話す。

「よく判っているじゃねぇか」

「それにお前の言った事が本当であれば、お前は私の事を誰かに言ったりはしないはずだ」

男は秘密漏洩の心配が不必要な理由を述べた。

男の言う理由に対する疑問を訊く、天竜。

「何故、そんな事が言い切れる?」

「お前は分の悪い戦がしたいんだろう!?」

男は天竜の先程の言葉を逆手に取った。

言われて納得する、天竜。

「確かにそうだな」

「そしてもっと強くなった私と戦いたい」

男は自身の見解を付け加えた。

天竜は男の見解をそのまま受け入れた。

「その通りだな」

そして二人はどちらからともなく笑い合う。

「ふふふ」

「ははは」

数瞬の間、笑い合った後、男が天竜に話し掛ける。

「そういう事なら、私はいつまでもお前の相手をしている暇は無い」

「そうだろうな」

短く応えた、天竜。

「さらばだ」

そう言うと男は立ち去って行った。

「あばよ」

天竜が応えた。

天竜の話相手をしていた男。

その男の名は桂小五郎。

長州藩士であり、その中でも重要な役割を担っていた男である。
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by gushax2 | 2016-05-09 05:58 | 壱章/人斬り | Comments(0)