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弐章/英雄/挿話弐拾弐/反撃の狼煙

燿炎達、反乱軍が大地の大陸を復活させると、その知らせは炎の大陸、風の大陸へと、すぐに広まっていく。

氷の大陸に達して露衣土の耳に届くのも時間の問題であろう。

一ヶ月もすると、炎の大陸や風の大陸から多くの人々が流入して来る様になる。

露衣土軍に敗れた抵抗勢力の残党や戦火の中で住まいを追われた者達。

炎の大陸や風の大陸では未だ露衣土軍に因る、抵抗勢力への威力制圧が続いていたからだ。

更には露衣土帝国の圧政に耐え切れずに逃げ出して来た者達。

日に日に大地の大陸へと逃げ出して来る人々が増えていった。

反乱軍はそれら全てを受け入れて力を蓄えていく。

この時点ですでに反乱軍という一勢力ではなく、一つの国家と為り得ていた。

国家としては、まだまだであったが、規模としては、すでに一勢力として片付ける事は出来なくなっていたのである。

そして燿炎、麗羅、凍浬、崩墟等、反乱軍の主力達も今は国を整える事に専念するしかなかった。

毎日、毎日、やらなければならない事が山積みだったのである。

それというのも大地の大陸では何故か大地の魔法が使えなかったからだ。

大地の精霊の守護を受けた者が大地の魔法を使っても何も起こらない。

崩墟でさえも、どうにも出来なかった。

土木工事の全てを人の手に頼らなければならなくなったのだ。

住居の建築、道路の整備、植樹や農耕等々。

更には人が増えてきた事に拠って、法の整備や国民への役割分担等も決めなければならなくなる。

国家運営の全てを自分達でやらなければならなかった。

国民、一人一人の適性を見極めて、要所要所に配置する。

土木工事に従事する者、生産活動をする者、役人としての仕事を任せる者、その他、人間の生活に必要な仕事を任せる者、それぞれ割り振らなければならなかった。

燿炎達、反乱軍の幹部達は日々、それらの事で頭を悩ませる事にもなったのである。

しかし、その様な事が国民とっては幸いだったのかもしれなかった。

国民、一人一人がそれぞれ自らに与えられた役割を果たしていく事で、自分達の国を豊かにする事に繋がる。

大地の大陸にやって来た者達は皆、夢と希望に満ち溢れていた。

国民は自分達へ与えられた仕事にやり甲斐と誇りを感じて、充実した日々を送る。

そんな国民に支えられて順調に国が整備されていく。

更に国が整備されていく事で、最初は大変だった幹部達の負担も日に日に減っていった。

その結果、大地の大陸が復活してから半年、燿炎をリーダーとした、塑という名の国を建てる事になる。

そして数万人に膨らんだ国民の前で燿炎が高らかに叫ぶ。

「この世界の未来の為、露衣土帝国の横暴を赦す訳にはいかない。我々がこの地を得る事が出来たのは、正に我々に露衣土帝国の横暴を止める役割があるからである。そこで俺から皆に頼みたい事がある。俺に協力して欲しい。俺を信じてくれ。そして俺から皆に命令する。俺を信じて、ついて来い!必ずや露衣土帝国を倒してみせよう!」

燿炎は多くの民衆から喝采を浴びている。

そして、この事が露衣土帝国に対する、反乱軍の反撃の狼煙ともなった。
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by gushax2 | 2016-06-10 05:50 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話弐拾壱/蘇る大地の大陸

炎の大陸の南端にある岬。

燿炎達、反乱軍は万象から得た情報を元に、此処から、それぞれが担当すべき島へと向かう。

崩墟が大地の魔法で海底を海面上に隆起させて道を作り、数人の者を従えて、遥か南西にあるらしい南の小島へ向かった。

凍浬が氷の魔法で海面を凍らせて道を作り、数人の者を従えて、西の方にあるらしい北の小島へ向かう。

麗羅は護衛を一人だけ伴って、風の魔法を使い、北の小島よりも更に西にあるらしい西の小島へ向かって飛び去った。

燿炎は残った者達と共に舟に乗って、一番近くで、すぐ南の見える距離にある東の小島へ向かう。

西の小島に到着した麗羅は燿炎、凍浬、崩墟がそれぞれの島へ到着するのを待つ。

西の小島が距離は一番、遠かったが、風の魔法で飛んで行った麗羅が逸早く到着していた。

そして麗羅がテレパシーで他の者達の状況を確認する。

燿炎、凍浬、崩墟がそれぞれの島に到着して準備を整えていく。

先に準備を終えていた麗羅が再びテレパシーで他の者達の準備が済んでいる事を確認する。

確認を終えると、麗羅はタイミングを合わせる為に合図した。

そして燿炎、麗羅、凍浬、崩墟の四人は同時にそれぞれの魔法を使う。

大地の大陸を海底から海上へと隆起させようとした。

万象の話に拠ると、この魔法を最低でも半日程は続けなければならないらしい。
四人は集中して魔法を唱えている。

いや、唱えていると言うよりは念じていた。

そして、そのまま半日が過ぎる。

まだ何も変化は見られなかった。

それから幾らかの時が過ぎてから、少しづつ海面に陸地が現れてくる。

それでも四人はまだ魔法を念じていた。

そして、また幾らかの時が過ぎて、やっと陸地の隆起が止まる。

四方の小島は大陸と陸続きになって、それぞれ大陸の東端、北端、西端、南端になっていた。

周囲の者達がそれぞれに燿炎、麗羅、凍浬、崩墟へ陸地の隆起が止まった事を告げる。

四人は状況を告げられた者から順にその場に崩れ落ちた。

半日以上も集中して魔法を使い続けたのだから、それも当然であろう。

四人は気絶していた。

それぞれ部下の者達が介抱をしたが、一向に目を覚まさない。

しかし呼吸も脈拍もあったので、死んでいる訳ではない様だった。

部下達は仕方がないので四人をそれぞれ、その場に横たえて、それぞれ本人の回復を待つ。

そして暫くしてから、崩墟が最初に目を覚ました。

崩墟は状況を確認すると、麗羅に意識を送る。

何度目かに麗羅が目を覚ました。

目を覚ました麗羅が状況を確認する。

そして麗羅がテレパシーで燿炎と凍浬を起こそうとした。

先ず凍浬の方が目を覚ます。

最後に燿炎が目を覚ました。

麗羅は燿炎が目を覚ました事を確認すると、風の魔法を使って上空に飛び上がり、大地の大陸を見下ろす。

そして広大な大地の大陸の全容が明らかになる。

面積は炎の大陸や氷の大陸よりも、更に幾らか大きかった。

燿炎達は一度、大地の大陸の中心付近に集まってから、周囲を散策する。

所々に過去の文明のものと思われる痕跡が残されていた。

燿炎達には、どれくらい以前のものか、見当もつかない。

恐らくは万象であっても見当はつかないであろう。

伝説としてのみ、一部の人々の間で語り継がれてきたのだ。

その伝説の『大地の大陸』が今、現実のものとなった。
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by gushax2 | 2016-06-09 06:21 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話弐拾/氷の皇帝の孤独な戦争

氷の大陸、元、浄の国のほぼ中心にある露衣土城。

その露衣土城の中を一人の男が露衣土の部屋へと急いでいる。

前線からの報告の役目を持った男だ。

男は露衣土の部屋に入ると、清々しい表情で報告をし始める。

「岩堝隊が燿炎達、反乱軍を掃討したとの報告が入りました」

「そうか、」

露衣土は表情一つ変えずに、それだけを呟く様に応えた。

報告係の男は少し拍子抜けしたが、そのまま露衣土の部屋を後にする。

「では、失礼、致します」

再び一人になった露衣土は少し考え込んだ。

ふと、昔を懐かしく感じた。

そして血気盛んだった若かりし頃の事を思い出す。

─────

「この国はもう駄目だ。腐っていやがる」

露衣土が腹立たしそうに言った。

炮炎は露衣土とは対照的に冷静に話す。

「確かにな。しかし、だからと言って、我々まで腐ってしまっていいという訳ではないだろう」

「何、甘っちょろい事を言っているんだ。俺達は腐ってでも現状を打破する必要があるのではないのか!?」

露衣土が炮炎に食って掛かった。

そんな露衣土をいなす様に燿炎に意見を訊く、炮炎。

「燿炎。お前はどう思っているんだ!?」

「俺は炮炎の方が甘い様に思う。多くの民衆はそんなに世の中の事を構っていられる程、ゆとりがある訳では無い。多少、強引にでも改善していく必要があるのが、世の中なんじゃなかろうか」

燿炎は自身の意見をはっきりと炮炎に伝えた。

そんな燿炎の意見に対して、自らの疑問をぶつける、炮炎。

「例え俺達に正義があったとして、本当に俺達だけで決めてしまっていいのだろうか!?」

「誰が決めるかなんて関係ない。結果的に改善する事さえ出来れば、そこに正義がついてくるんじゃないのか!?」

今度は露衣土が炮炎の意見に対する、自らの疑問をぶつけた。

その露衣土の疑問に対して、炮炎は自らの意見を述べる。

「結果としての正義が大切なのではなく、皆で何が正義なのかを模索する、その過程が大切なのではなかろうか」

「そう悠長な事を言ってる間にも、我々の目の前では弱き者達が犠牲になっていってるんだぞ!?」

露衣土は再び炮炎の意見に対する、自らの疑問をぶつけた。

それでも尚、自らの主張を貫き続ける、炮炎。

「それでも、だ。力ずくの改善では、結局、それに因って弱き者達が犠牲にもなる」

「だったら、それこそ力ずくの改善でも変わりはないんじゃないのかな!?」

今度は燿炎が炮炎に素朴な疑問をぶつけた。

更に持論を繰り返す、炮炎。

「結果が変わらないからこそ、過程を大切にすべきだと言っている」

結局、この時の話し合いでは結論が出せずに、その後、炮炎が一人で二人の下を去って行く事になった。

─────

そして今は露衣土の方が一人ぼっちになっている。

露衣土にとっての戦争は今や、自分自身との戦いにもなっていた。

そんな露衣土がぼそぼそと独り言を始める。

「見てるか炮炎よ、そして燿炎よ。正義の旗は勝った者の下にのみ棚引くのだ。そして、その正義の旗の下にのみ、平和という魔物を呼び寄せる事が出来る。後少し、後少しで私が正義であった事を証明出来る。私に歯向かった事をあの世で悔いるがいい。そして私も行こう。平和という魔物を手懐けた後、お前達の悔しがる顔を私に見せておくれ。懐かしいな。昔はよく、お前達を悔しがらせたもんだ。正直、私は自分が憎い。平和が憎い。平和という魔物を手懐ける為にお前達を殺さねばならなかった事。だが、それも後少しで終わる。私は決して英雄になりたかった訳ではない。お前達と同様に、ただ、皆の幸福を望んでいるにしか過ぎない。だから全てが終わったら、また皆で語り明かそうぞ」

露衣土は一人、泣いていた。
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by gushax2 | 2016-06-08 06:08 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾玖/地平を踏む巨人

崩墟。

風の大陸にあった凪の国で生まれたが、当時、風の大陸では凪の国も含めた全土で、大地の精霊の存在は信じられていなかった。

その事から崩墟は十歳になった時に、炎、氷、風、いずれの魔法も使えなかったという理由に因り、『悪魔の子』と決め付けられて、凪の国から追い出されてしまう。

その後、放浪を続けて各地を転々としながら、大地の精霊に導かれるように、炎の大陸にあった万象が暮らす小さな村に辿り着く。

崩墟は生まれついた時から、言葉を発する事が出来なかったのだが、万象と出会う事に拠って、大地の精霊の守護を受けた者同士での意思疎通を可能にする魔法を習得する事も出来た。

そして万象と共に万象の暮らす村に、そのまま住み続ける事になる。

この村の住人の七割程は大地の精霊の守護を受けた者達であり、崩墟と同様に各地で故郷を追われた者達でもあった。

だから崩墟も先の住人達に温かく迎え入れられた。

崩墟は万象の暮らす村に辿り着く事で、やっと孤独から解放されたのでもある。

そして崩墟は生まれて初めて、幸福らしきものを感ずる事も出来た。

しかし、その幸福らしきものは束の間のものである事を万象から聞かされる事になる。

崩墟は精霊の星に選ばれた者であって、いずれ大地の大陸を復活するべく、この村を旅立たねばならない運命である事を万象から聞かされた。

崩墟はその話を聞かされて、最初は訳が判らずに混乱もしたが、万象の話をよく聞いていく内に本当の幸福というものを探す為にも、自らの運命とやらに乗っかってみる気にもなっていったのである。

自分が何故、この世界に生を受けたのか。

万象の話に拠れば、崩墟自身にも万象と同じ様にこの精霊の星から与えられた特別な役割があると言う。

その特別な役割が大地の大陸を復活させると云う事だった。

そして、その役割を果たす事こそが、崩墟にとっての本当の幸福なのかもしれない。

崩墟はそう考えるだけで、自分自身に対する期待で胸が躍る様な感じがする。

万象と出会うまでは、自分がこの世界には必要のない存在にしか思えなかった。

しかし万象はその様な崩墟に対して、この世界に存在するものは全て、それぞれに与えられた役割があると云う事を説いたのである。

崩墟は万象と出会って、万象の話を信じる事に拠り、やっと自分自身で自分を肯定する事が出来る様にもなったのだ。

そうなる事で崩墟の中の世界が一変する。

そうなる事で崩墟から見える世界が一変した。

それまで自分自身を恨み、世界を憎む事しか出来なかった自分が、自分自身を、そして、この世界を愛おしく思える様になったのだ。

そして自分には、大地の大陸を復活させる役割がある、と万象は言う。

崩墟はそれが本当であるならば、自分にとっては大変に光栄な事であると共に、自らの全てを懸けるだけの価値がある様に思えたりもする。

そして崩墟は万象と共に燿炎達との出会いを待つ事となった。

後に崩墟は『地平を踏む巨人』とも称される事になる。
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by gushax2 | 2016-06-07 05:51 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾捌/伝説の魔法使い

万象。

五百年程前に炎の大陸を統一した炎帝に仕えて、炎、氷、風の魔法を使いこなし、炎の大陸を統一する際に獅子奮迅の活躍をした、伝説の魔法使い。

実際には、炎、氷、風だけでなく、大地の魔法も使っていた。

しかし大地の魔法、そして大地の精霊に関しては、未だに、その存在すら信じられていない地域があったりもする。

更に万象は戦闘において、大地の魔法を使う事は殆ど無かった。

戦闘では炎、氷、風の魔法が使えれば十分に事足りていたし、万象が使う攻撃用の大地の魔法は周囲にも被害を及ぼすものであったからだ。

わざわざ大地の魔法を使う必要は無かった。

そして万象は戦闘での活躍が評価されて伝説となったのである。

その様な事から、五百年程前に万象が大地の魔法を使っている事に気付く者は誰一人として居なかった。

そして炎帝が炎の大陸を統一すると、その後、万象は炎帝の下を離れて、暫くの間、各地を転々とする事となる。

万象は自らが全ての精霊の守護を受けている事で、他の者達には出来ない、この精霊の星から自分だけに与えられた特別な使命がある様に思った。

そして万象はこの精霊の星に古くから伝わっていた、大地の大陸に関する伝説を説き明かす事こそが、自らに与えられた使命なのではないかと考えたのである。

ある意味、伝説の男が精霊の星の伝説に挑む事は運命付けられていたのかもしれない。

更に言うと、万象自身も大地の大陸に関する伝説には大変な興味を持っていた。

自分が大地の精霊の守護も受けているのに、この精霊の星において、現実には大地の大陸が存在しない。

その事がどうしても不思議でならなかった。

そして万象は各地を放浪しながら、大地の大陸に関する情報収集をする。

また実際に南半球に何度となく足を運び、調査を繰り返して、大地の大陸に関する伝説を解き明かそうとした。

その後、数百年の歳月を掛けて、やっとの事でその伝説を解明するまでに至る。

正に通常の何倍もの寿命を持った万象にしか出来ない事であったのかもしれない。

そして自分一人では大地の大陸を復活させる事が不可能である事を知って、その後、万象は再び炎の大陸へと戻って来る事となる。

しかし万象が放浪している間に、炎の大陸では炎帝が何者かに討たれていて、再び混乱を極めていた。

そんな中で万象は炎の大陸の奥地にある小さな村に辿り着く。

万象はその村で、大地の精霊の守護を受ける者達を受け入れながら、大地の大陸を復活する事が出来る、精霊の星に選ばれし者達が現れる事を待つ事になった。

そして辿り着いた村で待つ事、百年程、経った時、一人の大地の精霊の守護を受けた若者がやって来る。

その若者は崩墟という名で、言葉を発する事が出来なかったが、言葉を解する事は出来た。

そんな崩墟に対して万象は大地の精霊の守護を受けた者同士で地面を振動させて意思疎通を図る、大地の魔法を教える。

それまでの崩墟にその様な事は思い付く事すら出来なかったが、万象から教わると、すぐに習得する事が出来た。

万象はそんな崩墟の潜在能力の高さを一目で見抜いて、精霊の星に選ばれた者だと確信する。

そして崩墟と共に燿炎達、他の精霊の星に選ばれし者達が来る事を待ち続ける事となった。
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by gushax2 | 2016-06-06 06:04 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾漆/照らし出された道筋

燿炎達は万象に崩墟と引き合わされる形となった。

そして燿炎は何かを考え込む様に黙ってしまう。

燿炎は万象の名に聞き覚えがあって、それが何なのかを思い出そうと、必死に自らの記憶を探った。

そして暫くしてから燿炎が話し始める。

「五百年程前に炎の大陸を統一した炎帝。そして、その炎帝に仕えた伝説の魔法使い。炎と氷と風の魔法を使いこなし史上最強と謳われる、伝説の魔法使い、その名も万象」

「ほほう。そんな昔の事を知っている者が、まだ、おったんじゃな」

少し感心する様に万象が応えた。

燿炎が驚きの表情を顕にして言う。

「まだ、ご健在だったのですね」

「勝手にわしを殺さんでくれよ」

万象が笑いながら応えた。

燿炎はバツが悪そうに謝る。

「すみません」

「いや、いいんじゃよ。すでに死んでいると思われていても、仕方のない事じゃ」

万象が勘違いされていても無理はない事を伝えた。

そして続けて話をする。

「実はわしはな、全ての精霊の守護を受けておって、その分なのか、寿命が通常の何倍も長い様なんじゃ」

それを聞いた燿炎は万象に訊く。

「と云うと、大地の精霊の守護も受けておられるのでしょうか?」

「そういう事になるかな」

万象はそう応えた。

燿炎が万象に伺う。

「もう一つ、お尋ねしたい事があります」

「なんじゃ?」

万象が短く応えた。

再び燿炎が万象に訊く。

「何故、炎帝の下を離れたのでしょうか?」

「なんの事はない。役目を終えただけの事じゃ」

万象があっさりと答えた。

三度、燿炎が万象に訊く。

「万象が炎帝の傍に居れば、炎の大陸が再び混乱に陥る事は無かったのかもしれないのでは?」

「いや、それは間違いじゃ。確かに、あの時、一時的に、ではあるが、平和を手にする事が出来たのかもしれない。しかし争いに依って手に入れた平和など、そう長続きするもんじゃないんじゃよ」

万象は燿炎の疑問を否定した上で、自身の考えを述べた。

幾度となく燿炎が万象に訊く。

「では、それも定めだと?」

「そうじゃ」

万象が短く応えた。

此処で燿炎は考え込んでしまう。

すると今度は万象の方から訊いてくる。

「主等、こらから、どうするつもりじゃ?」

燿炎は考え込んだまま答えようともしない。

それを見て凍浬が応える。

「露衣土を倒す」

「それは解っておる。その前に、やっておく事があるんじゃよ」

凍浬の言葉を聞いた万象が言った。

今度は凍浬が万象に訊く。

「やっておく事とは?」

「大地の大陸を蘇らせる事じゃよ。そうする事で多くの民衆の支持を得られる」

万象が凍浬の問いに答えた。

凍浬は万象の言葉に疑問を呈する。

「なるほど。しかし大地の大陸はその存在すら明らかになっていないのでは?」

「大地の大陸は南にある。南にある四つの小島で、それぞれ炎、氷、風、大地の精霊の守護を受けて、この星に選ばれた者達の魔法に依り、大地の大陸は蘇る」

凍浬の疑問に対して、万象は信じられない様な話をした。

凍浬を始めに反乱軍の者達は皆、呆気に取られている。

そんな反乱軍の者達を横目に万象は続けて言う。

「主等は崩墟を加えて、この星に選ばれし者達が揃ったではないか」
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by gushax2 | 2016-06-05 05:50 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾陸/最後の欠片

燿炎達は万象に連れられて、村の広場へやって来る。

広場の中心には焚火があって、その周囲を反乱軍の仲間達が囲んでいた。

しかし数名の者達の顔が見られない。

燿炎は麗羅に尋ねる。

「他の者達は?」

麗羅は無言で首を横に振った。

「そうか、」

燿炎は少し落胆したが、落胆ばかりもしていられないので、すぐに気を取り戻した。

そこへ万象が寄って来て燿炎に問う。

「犠牲者が出たのはお気の毒じゃが、主等には、やるべき事があるじゃろう?」

燿炎は何も言わずに強い表情で応えた。

更に万象は続けて燿炎に問う。

「そこで主等に会わせたい者がおるのじゃが、会ってみるか?」

「どの様な者なのでしょうか?」

燿炎は万象に訊き返した。

万象は燿炎の問いには構わずに、別の質問を燿炎に向ける。

「主等は露衣土が大地の精霊の守護を受けている事を承知しておるのか?」

「いえ。俺は露衣土とは幼い頃からの付き合いで、よく知っているが、そんな話は聞いた事もありません」

燿炎はまだ万象の言った事が信じられない様な感じで応えた。

それを予測していた様に語る、万象。

「やはりな。まあ、自分が何の精霊の守護を受けているかなんて、わざわざ他人に話したりはせんだろうから、意図的に隠していたのかは判らんが、それは紛れも無い事実ではある」

「そうですか。俺はてっきり、露衣土は氷の精霊の守護を受けているもんだと思っていました」

燿炎は己の思い込みを恥じる様に言った。

それを聞いた万象は更に驚く話をする。

「露衣土は氷の精霊の守護も受けておるよ。ごく稀だが、同時に複数の精霊の守護を受ける者もおる。露衣土はそんな一人である」

「では、ひょっとしたら、氷の魔法で相手を凍らせて、その凍らせた相手を砕いていたのは大地の魔法だったりするのでしょうか?」

燿炎は万象の話から生じた疑問を投げ掛けた。

投げ掛けられた疑問を肯定して、更に続ける、万象。

「恐らく、というよりは間違いなく、そうであろう。凍らせたものを氷の魔法で砕く事は出来ん」

「なるほど。そうだったんですか」

燿炎は納得した。

そして万象が話を元に戻す。

「そこで、じゃ。主等には足りない部分を補う者が必要なんじゃないかと思っておるのじゃが」

「その様な者がおられるのでしょうか?」

燿炎は万象に尋ねた。

万象は再び燿炎に問い掛ける。

「だから会ってみる気はないか?」

燿炎は少し戸惑ったが、すぐに返事をする。

「是非、会わせて下さい」

「ちょいと、崩墟を呼んで来ておくれ」

万象は声を大きくして、少し離れた所に居た男に指示した。

暫くすると、とても大きな男がやって来る。

燿炎の体もかなり大きい方だったが、崩墟という男の体は燿炎よりも、更に二回り程、大きかった。

皆が崩墟の大きさに驚いてる中、万象が話し始める。

「これが崩墟じゃ。この男、大地の精霊の守護を受けている。言葉を発する事は出来ないが、言葉を解する事は出来る。中々、役に立つ男じゃが、どうじゃ?主等と共に連れて行っては貰えまいか?」

そう言われて燿炎は直接、崩墟に訊く。

「俺達の方から是非にと、お願いしたいくらいだが、本人はどう思っているのか。俺達はいつ死ぬやもしれぬ戦いの中に居る。それでも構わないのか?」

崩墟は無言で頷いた。

「この男もまた主等と共に露衣土を倒す定めにあるのじゃよ」

万象はこの出会いが避けられぬ運命であるかの様に言った。
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by gushax2 | 2016-06-04 06:13 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾伍/偶然の出会い、必然の導き

「燿炎、まだ、判らないのか?」

炮炎が厳しい眼差しで燿炎に問うた。

「炮炎」

燿炎は炮炎の問いには答えられずに、それだけを言うのが、やっとだった。

そんな燿炎の様子を見て説得を続ける、炮炎。

「露衣土のやらんとしている事が真の平和に繋がるものではない事を」

「んー」

燿炎は言葉にならない呻き声を発するだけだった。

突然、話に割って入ってくる、露衣土。

「言いたい事は言い終わった様だな」

「止めろ!露衣土!」

燿炎は露衣土を制止しようと叫ぶ。

─────

自らの叫び声と共に目を覚ます、燿炎。

これまでに何度となく見ている夢であった。

そして過去に現実として起こった事でもある。

すると何処かからか、笑い声が聞こえてきた。

周りを見渡すと、麗羅と凍浬がこちらを見て笑っている。

そして麗羅が笑いながら燿炎に言う。

「こんな状況になってまで何も変わらないのね」

「そう言う麗羅も相変わらずだな」

凍浬は麗羅へ皮肉を言って微笑んだ。

すぐさま麗羅が凍浬に言い返す。

「うるさいわね。あんたも相変わらずに嫌な奴ね」

麗羅は少し臍を曲げた様だった。

凍浬は苦笑する。

そんな二人の様子を見て、燿炎は少しホッとした。

そこへ一人、年配の男がやって来て、燿炎に声を掛ける。

「やっと気が付かれましたか」

「貴方は?」

燿炎はその人物が誰なのか判らずに訝しげに尋ねた。

年配の男は燿炎の問いに応える様に自らの名を明かす。

「万象と申します」

「万象が私達を助けてくれたのよ」

麗羅が口を挟んできた。

燿炎は麗羅の言葉を聞いて、万象に礼を述べる。

「そうでしたか。それは、どうもありがとうございました」

「いやいや、いいんじゃよ。たまたま通り掛かったついでに助けたまでじゃ」

万象は謙遜する様にそう応えた。

そして燿炎は思い起こす様に言う。

「そう言えば、俺達は、」

「そうよ。露衣土軍に襲われたみたい」

麗羅がすぐさま応えた。

燿炎は思い出した様に言う。

「そうだ。俺達は地割れに飲み込まれたんだ」

「ふふふ」

麗羅はそんな燿炎を見て微笑んだ。

燿炎は状況を把握した事で、万象に対する関心が強まって、再び万象に尋ねる。

「しかし、あの様な状況で俺達を助ける事が出来るなんて。それに、あの様な場所を通り掛かる事も普通じゃ考えられない。貴方は一体?」

「まぁ、気になさるな。それも定めじゃ」

万象は事も無げに、そう応えた。

燿炎は納得がいかなかったが、命の恩人にこれ以上、同じ事を尋ねるのは失礼だと思って話題を変える。

「では、此処は何処でしょうか?」

「わしと仲間が暮らす村じゃよ」

万象はすぐに応えた。

燿炎は考える様に少し黙り込む。

すると万象が燿炎達に声を掛ける。

「皆さん、気が付かれた様なので、こちらに来なさいな」

そう促されても、燿炎はまだ考え込んでいる。

そして独り言の様に呟く。

「万象。何処かで聞いた名だな」

燿炎は万象と云う名に聞き覚えがある様であった。

麗羅が燿炎を急かす。

「そんな事いいから、早く行きましょう」

燿炎は苦笑しながら麗羅達と共に万象に着いて行く。
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by gushax2 | 2016-06-03 05:25 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾肆/彷徨う反乱軍

炎の大陸、元、炉の国の森の中、反乱軍が歩を進めていた。

露衣土を倒す為には反乱軍に、大地の精霊の守護を受けて大地の魔法を高いレベルで使いこなせる者が必要だと、燿炎は考えており、炎の大陸の何処かに『大地の精霊の守護を受けた者達が集まって暮らしている村がある』という噂を頼りに、炎の大陸を彷徨う事となったのである。

燿炎は露衣土が大地の精霊の守護も受けている事を知っていた訳ではなかったが、露衣土が大地の精霊の守護を受けた者達を受け入れていた事は周知の事実として知ってはいた。

だから今後、露衣土軍との戦いを進めていく上で、どうしても大地の精霊の守護を受けた者達を反乱軍の戦力として加えておきたかったのである。

その様な理由で、今、反乱軍は深い森の中を苦しみながら進んでいた。

燿炎達、反乱軍の者達は誰一人として口を開かない。

かなり疲労の色が濃い様だ。

それでも前に進んで行く外はない。

暫く森の中を進んでいると、一面拓けた場所に辿り着く。

しかし拓けているだけで、他に何がある訳でも無かった。

そして、その周囲もまた森に覆われている。

「なんなんだ?此処は?」

反乱軍の中の誰かが口を開いた。

「なんにしろ、警戒はしておけよ」

燿炎が皆に注意を呼び掛ける。

周囲を森に囲まれている場所で、この場所は少し異様にも感じられた。

人々が暮らしていた形跡でもあれば何も異様な事はないのだが、形跡も何も無いのである。

人間が森の中に集落を作る場合、主に二通りの方法が考えられた。

一つは元々拓かれた場所に集落を作る。

もう一つは人間が森を切り拓いて、そこに集落を作る。

いずれにしろ、この様に拓かれた場所は人間が集落を作るのに持ってこいであるが故に、人々の生活の痕跡が無い事が不自然にも感じられたのだ。

だからと言って、このまま足踏みしていても、どうにもなるものでもないので、反乱軍は警戒を強めて歩を進めて行った。

拓けた場所の中腹辺りに差しかかると、突然に地割れが起きて、反乱軍の殆どが飲み込まれてしまう。

反乱軍の中でも風の精霊の守護を受けた者達だけは、自ら風の魔法を行使して、空中に飛んで難を逃れた。

しかし風の精霊の守護を受けた者達の中でも麗羅だけは燿炎達と共に地割れに飲み込まれてしまう。

麗羅は事、魔法において、攻撃をする事が苦手だったが、攻撃を受ける事も苦手だったのである。

サポート魔法に限っての事だが、準備する時間を十分に与えれば、麗羅以外には誰にも出来ない様な魔法を使う事も出来たが、咄嗟の判断で魔法を使う事が苦手でもあった。

そして難を逃れたかに見えた、麗羅以外の風の精霊の守護を受けた者達に向かって、周囲の森の中から多数の炎と氷の矢が襲い掛かる。

どうやら敵の襲撃を受けた様であった。

恐らくは先程の地割れも大地の魔法に拠るものであろう。

空中に飛んだ風の精霊の守護を受けた反乱軍の者達は次々と倒されていく。

そこに一人の男が現れる。

そのまま地割れした地面の淵に立って、地割れした中の方を覗き込んだ。

「この程度なのか、反乱軍は」

物足りなさそうに男が呟いた。
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by gushax2 | 2016-06-02 05:32 | 弐章/英雄

弐章/英雄/挿話拾参/引き継がれる遺志

炮炎。

氷の大陸にあった浄の国で弟である燿炎より二年程、先んじて生まれ、幼少の頃から、よく露衣土や燿炎と行動を共にしていた。

露衣土が成人した事を切っ掛けにして、露衣土と燿炎は力ずくで浄の国の政権を奪い取る為の戦争を始める。

しかし炮炎は一人、二人の下を離れる事となった。

炮炎は露衣土の強引な考え方についていけなくなったのだ。

そして燿炎も一緒に連れて行こうとしたのだが、燿炎は露衣土と共に戦う事を選択したのである。

当時はそんな燿炎の選択を尊重するしかなかった。

炮炎自身もまさか露衣土の始めた戦争が精霊の星、全体にまで拡大するとは考えてもいなかったからである。

だから仕方なく、意見の合わない炮炎の方が一人で二人の下を去る事になった。

その後、炮炎は炎の大陸に渡って、煌という国にあった小さな村に辿り着いて、その村で暮らしていく事となる。

そして浄の国を乗っ取った露衣土が統一戦争を始めるが、炮炎の暮らしていた村は戦火に巻き込まれる事も無く、静かに平和な毎日を過ごしていた。

そんな、ある日、麗羅と凍浬が村に流れ着く。

麗羅と凍浬は統一戦争に因り、家族を失って、炮炎が暮らす村まで、やって来たのである。

炮炎はそんな麗羅と凍浬を非常に可愛がった。

炮炎自身もこの村に流れ着いたからか、二人には過去の自分が重なったのかもしれない。

そして、そうこうしている内に麗羅と凍浬も成長していく。

特に麗羅はとても美しい女性へと成長して、男性達の注目を集める様になっていた。

しかし当の麗羅は炮炎を慕っていたので、他の男性達には目もくれなかったのである。

炮炎はそんな麗羅に対して、最初はまともに相手をしていなかったが、一途な麗羅にいつしか愛情が芽生え始めて、やがて二人は恋人同士の関係となっていった。

そして暫くの間、二人は幸福な日々を過ごす。

しかし、そんな幸福な日々もそう長くは続かなかった。

その後、統一戦争は終結したのだが、炮炎は統一戦争後の露衣土の政策に対して、危機感を感じる事となる。

そして、このまま放っておけば、いずれは、この村も平和には過ごしていけなくなると云う事を察知して、露衣土を倒す為にと反乱軍を立ち上げる事になった。

当然にその反乱軍には成長した麗羅と凍浬も加わる事となる。

麗羅と凍浬の二人は共に反乱軍の中で、重要な役割を果たす様になっていく。

そんな中、事ある毎に反乱軍の仲間達に対して、露衣土を倒す為には燿炎の力が必要だと説いていた炮炎は、反乱軍の皆には内緒で燿炎を説得しに、単身、露衣土城に乗り込んで行った。

しかし炮炎は燿炎を説得するには至らず、炮炎は燿炎の目前で露衣土に殺されてしまう。

しかし以前から露衣土の政策に疑問を感じていた燿炎は、その事を切っ掛けにして露衣土の下を去る決意を固め、反乱軍へと身を投ずる事になる。

そして燿炎は炮炎の遺志を継ぐ形で反乱軍のリーダーとなって、露衣土軍との壮絶な戦いを繰り広げていく事になった。
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by gushax2 | 2016-06-01 05:46 | 弐章/英雄