燿炎達は万象に崩墟と引き合わされる形となった。
そして燿炎は何かを考え込む様に黙ってしまう。 燿炎は万象の名に聞き覚えがあって、それが何なのかを思い出そうと、必死に自らの記憶を探った。 そして暫くしてから燿炎が話し始める。 「五百年程前に炎の大陸を統一した炎帝。そして、その炎帝に仕えた伝説の魔法使い。炎と氷と風の魔法を使いこなし史上最強と謳われる、伝説の魔法使い、その名も万象」 「ほほう。そんな昔の事を知っている者が、まだ、おったんじゃな」 少し感心する様に万象が応えた。 燿炎が驚きの表情を顕にして言う。 「まだ、ご健在だったのですね」 「勝手にわしを殺さんでくれよ」 万象が笑いながら応えた。 燿炎はバツが悪そうに謝る。 「すみません」 「いや、いいんじゃよ。すでに死んでいると思われていても、仕方のない事じゃ」 万象が勘違いされていても無理はない事を伝えた。 そして続けて話をする。 「実はわしはな、全ての精霊の守護を受けておって、その分なのか、寿命が通常の何倍も長い様なんじゃ」 それを聞いた燿炎は万象に訊く。 「と云うと、大地の精霊の守護も受けておられるのでしょうか?」 「そういう事になるかな」 万象はそう応えた。 燿炎が万象に伺う。 「もう一つ、お尋ねしたい事があります」 「なんじゃ?」 万象が短く応えた。 再び燿炎が万象に訊く。 「何故、炎帝の下を離れたのでしょうか?」 「なんの事はない。役目を終えただけの事じゃ」 万象があっさりと答えた。 三度、燿炎が万象に訊く。 「万象が炎帝の傍に居れば、炎の大陸が再び混乱に陥る事は無かったのかもしれないのでは?」 「いや、それは間違いじゃ。確かに、あの時、一時的に、ではあるが、平和を手にする事が出来たのかもしれない。しかし争いに依って手に入れた平和など、そう長続きするもんじゃないんじゃよ」 万象は燿炎の疑問を否定した上で、自身の考えを述べた。 幾度となく燿炎が万象に訊く。 「では、それも定めだと?」 「そうじゃ」 万象が短く応えた。 此処で燿炎は考え込んでしまう。 すると今度は万象の方から訊いてくる。 「主等、こらから、どうするつもりじゃ?」 燿炎は考え込んだまま答えようともしない。 それを見て凍浬が応える。 「露衣土を倒す」 「それは解っておる。その前に、やっておく事があるんじゃよ」 凍浬の言葉を聞いた万象が言った。 今度は凍浬が万象に訊く。 「やっておく事とは?」 「大地の大陸を蘇らせる事じゃよ。そうする事で多くの民衆の支持を得られる」 万象が凍浬の問いに答えた。 凍浬は万象の言葉に疑問を呈する。 「なるほど。しかし大地の大陸はその存在すら明らかになっていないのでは?」 「大地の大陸は南にある。南にある四つの小島で、それぞれ炎、氷、風、大地の精霊の守護を受けて、この星に選ばれた者達の魔法に依り、大地の大陸は蘇る」 凍浬の疑問に対して、万象は信じられない様な話をした。 凍浬を始めに反乱軍の者達は皆、呆気に取られている。 そんな反乱軍の者達を横目に万象は続けて言う。 「主等は崩墟を加えて、この星に選ばれし者達が揃ったではないか」
by gushax2
| 2016-06-05 05:50
| 弐章/英雄
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