ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、 二人の侍が足を止めて、年配の方の男から若い方の男に声を掛ける。 「大丈夫か?嘉兵衛?」 「はい、なんとか。六郎殿は如何でしょう!?」 嘉兵衛が六郎の言葉に応えて、更に六郎を気遣った。 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、 二人の侍は息を切らしていた。 更には顔から汗が吹き出している。 それも当然であろう。 二人は京の町中から此処まで必死に走って、逃げて来たのである。 「いや~、参った、参った。ちょっと、あそこの木陰で休むとするか」 六郎が嘉兵衛を誘った。 嘉兵衛が短く応える。 「はい」 二人は歩を進める。 ハァ、ハァ、ハァ、 はぁ、はぁ、はぁ、 少しずつ息が整って、汗も引いていく。 六郎と嘉兵衛の目線の百尺程、先に、大きな桜の木があった。 幹の太さは大人が四人で手を繋いで、輪になったくらいの太さであろうか。 花も散り終わって、葉桜もまた、趣を異にして中々に美しい。 そんな桜の根と根の間に先ず、六郎が腰を下ろして幹に背を預ける。 続いて根を一本挟んで隣の根と根の間に、嘉兵衛が腰を下ろして幹に背を預けた。 そして六郎が嘉兵衛に話し掛ける。 「まだまだ夏は先とは言え、さすがに、これだけ走ると暑くて堪らんな」 「そうですね」 嘉兵衛は短く応えた。 ハァ、ハァ、 はぁ、はぁ、 大分、息も収まってきた様だ。 再び六郎が嘉兵衛に話し掛ける。 「全く、今日は付いてないな」 「いや、逃げ切れた様なので、そうでもないのかもしれません」 嘉兵衛の方が前向きな考えを言った。 六郎が嘉兵衛の言葉に納得する。 「なるほどな」 ハァ、 はぁ、 「なんか、あったのか?」 突然に幹の反対側から、声を掛けられた。 途端に六郎と嘉兵衛は立ち上がって、桜の木から距離を取り、刀の柄に手を添える。 そして六郎が訊く。 「何奴?」 「おいおい。声を掛けただけで刀に手を掛けるってのは、どういう了見なんだ?」 桜の木の反対側から、何者かの声だけが届いて来る。 「うるさい!いいから、出て来い!」 先ず嘉兵衛が怒鳴る様に言いながら、素早く刀を抜く。 それに続く様に六郎は黙って、ゆっくりと刀を抜いた。 六郎と嘉兵衛の息の乱れは、すでに収まっている。 代わりに二人の間で緊張感が張り詰めていく。 「物騒な奴等だなぁ。俺の顔を拝みたけりゃあ、こっちに来ればいいだろ」 桜の木の反対側に居ると思われる、何者かは、ぶっきら棒に言った。 六郎達の緊張感なんて、関係が無いかの様である。 何者かの言葉を聞いて、六郎と嘉兵衛はお互いの顔を見合わせた。 二人は一瞬、拍子抜けしたが、すぐにまた気を引き締め直す。 そして六郎が嘉兵衛に目配せをした。 それを受けて嘉兵衛は二歩程、更に距離を取って桜の木の右側から、反対側へと回り込もうとする。 六郎も二歩程、更に距離を取って桜の木の左側から、反対側へと回り込もうとした。 必然的に二人は挟み込む様な形で、徐々に桜の木の反対側へと回り込んで行く。 #
by gushax2
| 2016-04-20 06:13
| 壱章/人斬り
|
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
ご協力サイト様
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||